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新規SaaSプロダクト立ち上げを成功に近づける、部署を越えた取り組み|Shippio柳沼さん

  • イベントレポート

柳沼 佑輔(やぎぬま ゆうすけ)株式会社Shippio Product Manager

2017年にLINE株式会社に入社後、アルバイト求人サービス「LINEバイト」のプロダクトマネジメントおよびグロースを担当。大手証券会社との合弁事業「LINE証券」にて株式、投資信託、つみたてNISA、デジタル証券等の投資サービスの立ち上げ、プロダクトマネジメント、グロースに従事。2021年12月に株式会社Shippioに入社。SaaS事業の立ち上げ、荷主向けプロダクトのプロダクトマネジメントを担当。

「新規プロダクト開発においては、部署や役割の垣根を越えた越境が大事」――最適なプロダクト開発に向けた、PdMと他部署の連携について、株式会社Shippio(以下、Shippio)の柳沼さんはそう語りました。

今回は、国際物流のDXを推進するShippioでPdMを務める西藤さん・柳沼さん・立石さんを招き、「PdMと他部署の越境や顧客課題の理解、本質的な価値提供の秘訣」をテーマにLTイベントを開催。(全3記事)

柳沼さんからは、新規SaaSプロダクト立ち上げ時に部署を越えた取り組みから学んだ、新規プロダクト開発を成功に近づけるポイントをお話しいただきます。

SaaSプロダクト『Any Cargo』の立ち上げの背景

柳沼:
フォワーディングとは、国をまたぐ輸送に必要な手続きを一括手配する、貿易のトータルコーディネートのことです。クライアントである荷主企業の要望に応じて最適な物流事業者を手配する役割を担います。

Shippioの『デジタルフォワーディング』は、フォワーディング業務をデジタル化することで業務効率化を推進するサービスです。

しかし、クライアントの荷主にとってShippioは多数いるフォワーダーのうちの1社。いかに提供できる価値の幅を広げ、より広範に顧客の課題解決をサポートできるかがShippioの課題でした。

そこで立ち上げたのがSaaSプロダクト『Any Cargo(エニイカーゴ)』です。ソフトウェア単体を荷主企業に提供することで、Shippioがフォワーディングを担わない案件に対しても、クライアントの生産性向上に寄与できます。

『Any Cargo』立ち上げ時(2022年)のShippioは下記のような状況でした。

  • 従業員数約30人のスタートアップ企業
  • リソースは常に逼迫
  • 一筋縄ではいかないレガシー産業
  • 早期のプロダクト立ち上げが必要

SaaSプロダクトの立ち上げ時にPdMとして学んだ、新規SaaSプロダクトの開発において重要だと感じたポイントをご紹介します。

1.PdMが率先して顧客と課題の解像度を上げにいく

新規プロダクト開発で最も避けたいことは「使われないものをつくってしまうこと」です。BtoBプロダクト開発では、セールスやCSが吸い上げてくる顧客の声にPdMが頼りきってしまうことがあります。しかし、開発の初期段階でセールスやCSの伝聞に頼りきると、ソリューション定義と実装のスピードが上がらなかったり、顧客が本当に求めるものとプロダクトが一致しないリスクが増大したりします。

これらのリスクを回避するには、PdMがみずから率先して顧客と課題の解像度を上げるしかありません。そのためにPdMができることは2つあります。

それが「顧客と信頼関係を築くこと」「業務データの流れを一緒に読み解くこと」です。

①顧客と信頼関係を築く

顧客との関係構築はセールスやCSの仕事だと割り切るのはもったいないことです。PdMこそ積極的に顧客と信頼関係を築いて、いつでもヒアリングできる関係性をつくることが大切です。

とくにプロダクト立ち上げ初期は「一緒にこのプロダクトを育てさせてください」というスタンスで顧客とコミュニケーションを取ります。こうすることで気軽にヒアリングがしやすい空気をつくれています。

②業務データの流れを顧客と一緒に読み解く

顧客が本当に求めるプロダクトをつくるために、顧客の現状の業務フローを正しく把握・理解することが必要不可欠です。

Shippioのヒアリングでは、顧客が業務で使っているExcelデータをオンライン上で画面共有してもらいながら、業務の流れを詳しく説明してもらいます。実際の業務データを顧客と一緒に読み解くことで、顧客の業務の中に隠れている課題や改善できる点を立体的に捉えられるようになりました。詳しくはShippioのnoteをご覧ください。

2.泥臭いオペレーションをいとわない

貿易ビジネスでは、顧客ごとに業務フローやデータの管理形式が根本から異なることが多く、すべてに適合する完璧なソリューションはありません。

ここで大切な姿勢は「ソフトウェア開発に固執せず、泥臭いオペレーションを担うことをいとわない」です。

たとえば、顧客のExcelデータをインポートするシステムをつくったとき、データフォーマットが多岐にわたるため、最初はソフトウェアだけですべてのデータに対応することが難しい状況がありました。

データの取り込み漏れを補完したり最適化する作業を、当時PdMである私が手動オペレーションを設計して実行まで担っていました。

そこから徐々にCSチームを巻き込み、オペレーションの業務フローを整備し、定型化したオペレーションをソフトウェアで自動化していくステップを踏んでいきます。

最初からすべてをソフトウェアで解決しようとする必要はありません。必要最低限の機能でリリースして、足りない部分は人の手で補う。初期の仮説検証のスピードを優先したい状況においては「泥臭いオペレーション」が有効な手法だと考えています。

3.セールスと密にコミュニケーションを取りながら仮説検証する

新規プロダクトの立ち上げは、プロダクト戦略から営業販売戦略まで考えるべきことが多岐にわたり、タスクが多く大変です。

そのような状況でも、スピード感を持ってプロダクトを立ち上げるために、プロダクトとビジネスがお互いの状況を常に把握しておく必要があります。

私たちの立ち上げたSaaS事業では、PdMとセールスで、下の図のように役割分担をして仮説検証していました。

もっとも、これらすべてを明確に分担するのではなく、お互いに役割を超えて「越境」し合って検証活動をしていました。また、仮説検証の進捗結果は常にフィードバックし合うように心がけていました。

PdMも特定の顧客においては毎回商談に参加し、個別で行うアポやヒアリングの結果・進捗をSlackと議事録で常にセールスと共有します。プロダクトとビジネスが密に連携しながら検証活動を進めることが、顧客のニーズに合ったプロダクトをより早く、適切に届けるうえでとても重要だと学びました。

本LTのスライドはこちら


LboseのPM勉強会では、参加者からの質問への回答も行なっています。今回のイベント内でいただいた質問の一部をご紹介します。

◆業界の専門知識が問われ、業界内での標準化が進んでいないレガシー業界でどのように知見を深めていますか?
◆プロダクト立ち上げ期にCS・セールスに頼りすぎると良くないというお話がありましたが、ユーザーの解像度を上げにいくPdM側の動きと、CS・セールスとの間で衝突は起こらないのでしょうか。
◆他部署を巻き込み、健全な開発組織をつくるうえで、どのような人材を開発組織に入れるべきだと考えますか?

登壇者に質問ができるのは、イベント参加者限定。オンラインイベントですので、学びを深めたい方はぜひご参加ください。

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