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大手の新規事業、成功のカギは「Why me?」の追求|パイオニア×エルボーズ対談

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パイオニア株式会社

カーナビやカーAV、ドライブレコーダーなど、車載機器の開発・販売を中心にグローバルで事業を展開している電機メーカー。1937年の創業以来、「世界初」「業界初」の製品やサービスを数多く生み出してきた。

長年にわたり蓄積した組織力やノウハウを活かし、新規事業に挑戦する大企業が増えています。大手電機メーカー、パイオニア株式会社もそのひとつです。

2024年1月から3月にかけて、エルボーズはパイオニアの2つの新規事業におけるソフト開発を支援しました。今回はパイオニア新規事業開発担当の小川慶輔さんと、エルボーズ代表の小谷が対談。

パイオニア流の新規事業開発フローや大企業の新規事業における課題、エルボーズを開発パートナーに選んだ理由などについてお話を伺いました。

【パイオニア流】新規事業開発の4ステップ

写真:パイオニア新規事業開発担当・小川慶輔 様

――今回エルボーズは、新規事業におけるMVP(デモ)開発を支援しました。パイオニアは、どのような流れで新規事業開発をしているのでしょうか?

小川:

前提として、私たちは長年カーナビをはじめとする車載デバイスやモビリティデータを活用したサービスを提供している会社です。そのため新規事業も「移動」に関する領域で取り組んでいます。ただ、それ以上のルールやレギュレーションはありません。

「こんなサービスがあったら、もっと移動体験が良くなるのに」という、普段の業務の中で生まれるアイデアが新規事業開発のスタートです。その段階を「フェーズ0」とし、その後は1から4つにフェーズを区切って進捗を管理しています。

――フェーズ0から4まで、どのくらいの期間をかけるのでしょうか?

小川:
1年間です。ちなみにフェーズ0でアイデアが50件近く集まり、その中から事業化に至るのは1、2件程度です。

小谷:
想像以上に短期間で、多くのアイデアを検証していますね。パイオニアのような大企業の場合、スタートアップに比べて「関係者が多い」などの理由から、新規事業開発に時間がかかります。なぜここまですばやく動けるのでしょう?

小川:
フェーズごとにKPIを設けるのがポイントです。今やるべきことが明確になるため、動きやすくなるのです。

新規事業とアジャイル開発は相性バツグン

――今回エルボーズにご依頼いただいた理由を教えてください。

小川:
私たちが蓄積してきたノウハウと新規事業開発に必要なものが異なっていたためです。これまでに蓄積した大量のデータや経験を活用し、アイデア出しや、ソリューションの検討をするまではスムーズでした。しかし開発段階で、行き詰まってしまって……。

小谷:
開発が行き詰まった一番の原因は何でしたか?

小川:
パイオニアは長年、カーナビをはじめとするモハードウェア開発を行ってきました。ソフトウェアサービスの立ち上げや、それに伴うMVPフェーズの経験は多くはありません。

今回採用された新規事業は、ソフトウェアの開発です。先程お話したように、1年間という短期間でフェーズ0から4まで進めなければいけません。

そのためには、最初に要件を固めて、それに従い開発を進めるウォーターフォール開発よりも、一度に大量のアイデアを出し、PDCAを回しながら開発を進めていくアジャイル開発のほうが、スピーディにプロジェクトを進められると思ったんです。

ただ、前述したとおり、私たちはソフトウェアの開発も、それに伴うMVPフェーズの経験も少ないのが課題でした。どちらにも強く、かつアジャイル開発でプロジェクトを回してくれるパートナーを探していたところ、エルボーズがフィットしたんです。

――今回のMVPフェーズには、私たちが関わっていない案件もあったと伺っています。そのうち2つの案件で、エルボーズを起用した理由を教えていただけますか?

小川:
エルボーズに依頼した2つの案件は、Webブラウザ上で完結する、ハードを伴わない開発です。アプリやソフトウェアの開発に強いエルボーズの力を借りたほうが、より効率的に、MVP検証が進められると考えました。

実際、3ヶ月で2つのMVP開発が完了し、現在は事業化に向けて社内で検証を行っているところです。エルボーズと組んだ案件は、事業家の有力候補として挙げられているんですよ。

「なぜ、パイオニアがやるのか?」を徹底追求

写真:エルボーズ代表・小谷

――事業化するプロジェクトに共通点はありますか?

小川:
事業化したときの収益規模は目安のひとつです。ただ、
収益にとらわれすぎると画期的なアイデアが潰れてしまいます。

そのため「ほかの事業を加速させる可能性があるか」「これまでになかったアイデアか」、「私たちがやる意味があるか」など多角的に考えることを心掛けています。

――「私たちがやる意味」について、詳しく聞きたいです。小川さんが考える、「パイオニアがやる意味」を教えていただけますか?

小川:
私たちには、カーナビ事業を通して培ってきた知識や経験があります。例えば、
これまで蓄積してきた走行データは、世界屈指のビッグデータです。

そしてデータをどう加工すれば、どんな課題解決につながるかを考えるフレームワークもある。ほかの企業にはマネできない、パイオニアだからこそできることだと自負しています。

小谷:
ゼロから事業を創造するスタートアップとは、一線を画した戦略ですね。

小川:
特に最近は、素晴らしいアイデアを持つスタートアップが多いと感じています。スピード感も、大企業とは桁違いです。だからこそ、
長年の積み重ねを生かした「パイオニアならでは」を追求することが重要だと考えています。

小谷:
今回ご一緒する中で、蓄積したデータやノウハウを生かし、高い解像度でニーズを把握していることも大きな強みだと感じました。適切にニーズを把握できずに、つまずくスタートアップやベンチャーは多いですからね。

また細かくフェーズを設け、フェーズごとにKPIを定めて開発を進めていくから、高い解像度を保ったまま事業化を実現できるんだろうな、と。

大企業、ベンチャー関係なく、この方法で新規事業開発を行っているところはまだまだ少ないですよね。

小川:
新規事業開発では、まずつくってから判断する「多産多死」を前提とした組織運営が必要です。

私自身、大手外資系企業で数多くの新規事業を立ち上げてきたメンバーから、フェーズごとにKPIを設定して段階的にふるいにかけるやり方を教わりました。

新規事業開発の部署ができた当初は、社内から「こんなことをして、意味があるのか」と懐疑的な声もありました。それでも続けていくうちに、多産多死の重要性が理解されるようになったのです。

スピーディーな開発には外部の開発チームが最適

――エルボーズとの協業について振り返らせてください。MVPフェーズでのすばやい開発を期待してご依頼いただきましたが、率直な感想はいかがですか?

小川:
まず、予算感が期待以上でしたね。私たちが想定していたより、かなり抑えた金額で受けていただけました。

小谷:
これは、パイオニアだから実現できた価格です。その理由は2つあります。1つ目は、担当者の小川さんが「外部も巻き込んだほうが、スピーディーで予算も抑えた開発ができる」と認識されていたからです。

MVPフェーズにおける開発の相談はよく受けます。しかしそのほとんどが、内製化を見据えた「社内メンバーの育成」をメインとしたものです。その場合、開発期間が長期化しやすく、予算も上がってしまいます。

なにより、スピードが重視される新規事業開発において「育成」メインのやり方が適しているかは、慎重に見極める必要があるかなと。

小川:
1年間でアイデア出しから事業化まで進めるので、スピード感を持って進めることは強く意識しています。

小谷:
まさに2つ目の理由が、小川さんの意思決定のスピード感です。新規事業開発では、「何が必要かわからないから、とにかく要素を詰め込んでほしい」とご要望をいただくことが多いんですよ。

それだと開発期間も伸びるし、予算も上がってしまいます。その点小川さんは、いるもの・いらないものの判断が明確でスピーディーでした。だから、限られた予算と開発期間でも、事業化の検証に必要な機能を過不足なく開発できたのです。

小川:
いくら良いアイデアが生まれても、他社に先を越されてしまった時点ですべてが水の泡ですからね。早期リリースのためには、すばやい開発が必須。そのためには、うまく外部を巻き込んでいかなければならないと、つねづね考えていました。

また社内メンバーは、新規事業開発とは別の業務も担っています。緊急性の高い業務が優先され、新規事業開発は優先度が下がる可能性もはらんでいます。その点、外部パートナーなら新規事業に注力していただけるので、開発期間も短縮されるし、クオリティも高くなりやすい。

今回エルボーズにMVPフェーズをお任せしたことで、「この考えは間違っていなかった」と実感していますね。

――ほかにも、エルボーズと協業して良かった点があれば教えてください。

小川:
新規事業立ち上げにおける、理想のプロセスが見つかったことはうれしかったですね。今回エルボーズに開発していただいたアウトプットは、社内でもすごく好評です。ただそれ以上に、「プロセスが秀逸だったよね」と話題に上ることが多くて。

例えば、これまで私たちは同期編集をしにくいツールで要件定義を行っていました。

リアルタイムで情報が更新できないため、企画サイドから開発サイドへ要件を伝える際は、丁寧なコミュニケーションや事前準備をしていました。その結果、理想のアウトプットにはたどり着けるものの、そのためのプロセスに時間がかかることが大きな課題だったんです。

一方でエルボーズは、Figmaなどの同期編集が可能なツールで要件を整理してくれて。「わかりやすい」「コミュニケーションの時間が短縮された」と社内でも好評でした。エルボーズから学んだやり方は、今後パイオニアの新規事業開発のスタンダードになっていくと思います。

「位置情報サービスの民主化」パイオニアの新たな挑戦

小谷:
ありがとうございます。パイオニアとの今回の事例は、ほかの大企業にも参考にしていただけると考えています。

小川:
大企業では、ウォーターフォール開発が主流です。しかし、今回エルボーズと協業したことで、新規事業開発にはアジャイル開発が適していると確信しました。

おこがましい話かもしれませんが、私たちの事例が広まることで、大企業に新しい風を吹かせられるとうれしいですね。

――ありがとうございます。最後に、今後の展望を教えてください。

小川:
ナビゲーションサービスを民主化していきたいです。地図といえば、Googleマップという誰にでも使いやすい汎用的なものがあります。しかし、あえて「カーナビ」を選んで使う方々もいる。

その人たちの気持ちに寄り添った事業を生み出していくことには、まさしく「パイオニアがやる意味」が詰まっていると思うんです。これからもパイオニアらしい戦い方で、多くの人に感動を届けていきたいですね。

 

ATTEND biz編集部(執筆=仲奈々/編集=園田遼弥/撮影=三浦えり)

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