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”SMB vs. EP“プロダクト特性の違いから考える「何をつくる?つくらない?」|IVRy 宮原 忍

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ホームページお役立ち記事”SMB vs. EP“プロダクト特性の違いから考える「何をつくる?つくらない?」|IVRy 宮原 忍

宮原 忍(みやはら しのぶ)VP of BizDev, Product Management

株式会社IVRyに一人目の事業開発として入社。新卒でエンジニア職を経験したほか、株式会社リクルートなどで事業開発に携わる。前職の株式会社プレイドでは執行役員として、SaaS領域において事業開発からプロダクトマネジメント、アライアンス全般をリードし、東証グロース市場上場に貢献した。

プロダクトマネジメントに求められる重要な責務に「本当につくるべきもの・つくらないものを判断すること」があります。

「判断基準のひとつとして、SMBとEPの共通点や相違点を活かすことができる」そう語るのは、株式会社IVRy(アイブリー:以下、IVRy社)の宮原さん。

「事業計画の達成と未来への投資、両方をねらうためにはどのような運営が適切なのか」
「プロダクト開発において、つくるべきものの判断基準はどこにあるのか」

今回はそんな疑問に答えられるよう、プロダクト開発の取捨選択についてIVRy社の宮原さんにお話しいただきました。

プロダクト開発におけるSMBとEP|共通点と相違点

椿原:
―― 宮原さんから「プロダクト開発におけるSMBとEPの違い」についてお話をお願いします。

宮原:
私からは、SMB(スモール&ミディアムビジネス=中小企業)とEP(エンタープライズ=大企業)の特徴と、その共通点と相違点についてお伝えます。

プロダクト開発において「何をつくるか、つくらないか」の判断基準として、SMBとEPの違いはどのように活かせるのでしょうか。

SMBとEPの共通点

SMBとEPの共通点は、プロダクトマネジメントにおいて、つねに市場規模や事業性に向き合わなければならない点です。

EPとSMBの売上と時間を軸に売り上げの伸び方を表にまとめました。

EPは1社あたりの単価が高く、まだプロダクトの完成度が低い初期フェーズにおいても、人の力で売り上げを作りやすい性質があります。しかし、日本国内におけるEPの企業数は約0.3%(1.2万社)。母数が少ないため、時間が経つにつれて成長率を維持もしくは加速させることが難しくなります。

対してSMBは1社あたりの単価が低く、はじめから多くの売り上げは期待できません。しかし、日本国内におけるSMBの企業数は約99.7%(419.8万社)と母数が非常に多いため、GTM(Go-To-Market=スケール可能な状態)後には売り上げが指数関数的に伸ばしやすいです。

そのため、プロダクトマネジメントでは、SMBとEPでは1社あたりの単価や売り上げの伸び方に違いがあることを認識した上で、将来的な事業性を同等に評価すべきだと考えています。

これらの観点から考えるとプロダクトマネジメントの重要な責務は、みなさんがPdM(プロダクトマネージャー)として日々の業務で取り組まれている「課題を特定すること」「課題の解決方法をプロダクトを通じて考えること」だけでは十分ではないと考えています。

さらに重要なことは「何をつくるか、つくらないかを事業性の観点で決定すること」です。プロダクトの最終的な目的のひとつである「事業化達成」のためにはこの責務からは決して逃れられません。

SMBとEPの相違点

一般的にSMB向けSaaSとEP向けSaaSを売上・コスト・資本の軸で比較した場合、下記のような相違点があります。

この表でまとめた相違点はあくまで一般論です。

たとえば、SMBのクライアント(利用企業)が多くを占めるIVRyで考えると、下記の表になります。

一般的なSMB向けSaaSとIVRyの違いは2つ。「解約率」と「プロダクト開発コスト」です。

1.IVRyは解約率が低い

一般的にはSMBの解約率はEPに比べ高い傾向にありますが、IVRyの解約率は非常に低いです。理由はクライアントにとって「Must have」な業務である、大切なお客様との電話コミュニケーションにフォーカスしたプロダクトだからと考えています。

このように、狙う市場や提供価値によって解約率は大きく変化します。

2.IVRyはプロダクト開発コストが高い

IVRyの主なクライアントはSMBですが、実際はプロダクト開発に対して多くの投資をしています。理由は対象としている企業数が膨大なため、中途半端な機能を提供することで営業リードタイムやサポートコストなどの事業指標が悪化するリスクがあるからです。

IVRyではクライアントの業務フローが完了できるレベルまでプロダクト品質を高めることを強く意識しているため、一般的なSMB向けSaaSに比べて開発コストが高くなっています。

「何をつくる?つくらない?」の判断基準

以上をふまえて、プロダクト開発における「何をつくる?つくらない?」を考えたいと思います。

大前提として、事業性の低いものはつくりません。もうひとつ重要なことは、SMBとEPの一般的な相違点を理解したうえで、プロダクト開発の目的である事業化達成における重要な因子――たとえば営業のリードタイムや顧客獲得コストなどから、判断基準を決めることです。

SMBを対象としたプロダクト開発で「何をつくる?つくらない?」の一例を表にまとめました。

たとえば地方で1店舗だけの商店を営む方も対象とするプロダクトは、ユーザーのITリテラシーに過度に依存せず、直感的で簡単に操作できることが重要です。また、低コストで導入でき、短期間で費用対効果を実感できるような機能が求められます。

次にEPを対象としたプロダクト開発で「何をつくる?つくらない?」の一例を表にまとめました。

SMBとは違いEPでは、独自の業務フローや組織構造に合わせるために、プロダクトに対して自由度や柔軟性を求める傾向が強いです。また、すでにさまざまなシステムやツールが導入されていることが多く、それらとの複雑な統合を実現するための機能への需要が高いといえます。

プロダクトマネジメントに必要なことは「事業化達成の重要因⼦から判断基準を導出すること」

クライアントがSMBでもEPであっても、プロダクト開発においては常に市場規模や事業性に向き合うことが重要です。

また、プロダクト開発の最終的な目的が「事業化達成」との前提において、「課題を解決できるが、事業性の低いもの」はどうしても優先度を落とさざるを得ません。

最後に、SMBとEPの相違点はあくまでも一般論のため、プロダクトの事業化達成のための重要因子から独自の判断基準を導出して「本当につくるべきもの・つくらないもの」を判断していくことが、プロダクトマネジメントに求められていると考えています。

>>本LTのスライドはこちら

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つねに市場や事業性と向き合いながらプロダクト開発のサイクルを回しているIVRy。

変化に柔軟に素早く対応するためには、中長期・短期両方のサイクルをうまく活用しながら運営する仕組みが大切だとわかります。

同日に登壇したIVRy・堀田さんのLTでは、「事業や組織の変化に柔軟に適応するIVRyのプロダクト開発チーム運営」についてお話しいただきました。

IVRy・堀田さんのLTはこちら


LboseのPM勉強会では、参加者からの質問への回答も行なっています。今回のイベント内でいただいた質問の一部をご紹介します。

◆カスタマイズ要望に対してはどのような開発スタンスでしょうか?
◆「B2B SaaSにおけるAI活用」に関して、IVRyのスタンスや試行錯誤の仕方を教えてください。
◆プロジェクト単位を3ヶ月に設定すると、3ヶ月で解決できる課題にしか臨まなくなる状態にはならないのでしょうか?

登壇者に質問ができるのは、イベント参加者限定。オンラインイベントですので、学びを深めたい方はぜひご参加ください。

<執筆=こつ / 編集=えるも

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