事業譲渡されたシステム。開発経験者は、ゼロ。それでも「Kasooku」の開発がうまくいった理由

2022年12月、株式会社ドゥーファが運営していた人材マッチングプラットフォーム「Kasooku（カソーク）」が、カソーク株式会社に事業譲渡されました。

事業譲渡に伴い、サービスモデルも大きく変更した「Kasooku」。そのため、かなり難易度の高い開発になったと言います。

サービスモデルを変えずにそのままのシステムを使えば、お金も時間も大きく抑えられる中、なぜカソークは険しい道を選択したのでしょうか。また、「大きなトラブルが日常茶飯事」だったという開発は、どのように行われていったのでしょうか。

「Kasooku」の事業責任者を務める中川侑紀さんに、ATTEND bizとの開発過程について伺いました。

社会を“善進”させるには、副業人材が必要だ

―― まずは、「Kasooku」について教えてください。

Kasookuは、人材マッチングプラットフォームで、カソーク株式会社（以下、カソーク）が運営しています。

もともと株式会社ドゥーファ（以下、ドゥーファ）が運営していた転職プラットフォームを、2022年12月にユナイテッド株式会社の子会社であるカソーク株式会社が事業譲受。現在は副業・フリーランス人材を中心としたマッチングプラットフォームとして運営しています。

―― ドゥーファからカソークへの事業譲渡に伴い、システムも移管することになったと。そのパートナーとして、ATTEND bizを導入していただいきました。

前のシステムのまま使うのではなく、なぜ費用や時間をかけてでもリニューアルすることになったのでしょうか。

Kasookuを買収したタイミングで、サービスモデル自体を変えたかったからです。以前は企業の担当者が「この人と働きたい」と思う方に直接スカウトを送る、いわゆるダイレクトリクルーティングのサービスでした。

しかし、譲渡後はキャリアアドバイザー経由でその方にあったお仕事を紹介する、転職エージェントのようなスタイルを採用することに。事業モデルを変更したことで、以前のシステムのままだと不都合な面が多く、ATTEND bizに改修をご協力いただくことになったんです。

―― なぜ、ダイレクトリクルーティングから転職エージェントへ変えることになったのでしょう。

親会社である、ユナイテッドのパーパス「意志の力を最大化し、社会の善進を加速する」に基づくものにするためです。ユナイテッドは、投資、教育、人材マッチングの3つのコア事業があります。この3つの連携を強化し、シナジーを創出することでパーパスの実現ができると考えています。

特に、投資事業は10年以上前から携わっています。この事業を通じてスタートアップの悩みやつまずくポイントがどんどん社内に蓄積され、「何かに還元できないか」と思っていました。そのひとつが、副業・フリーランス人材をスタートアップに紹介することだったんです。

Kasookuに登録していただいたタレントと面談し、「スタートアップで活躍できそう」と思った方に、適宜お仕事を紹介する。副業・フリーランス人材だと、かなり珍しいのではないかと思います。

―― パーパスの実現のために、システムそのものを変更する必要があったのですね。ATTEND bizとは、いつ頃からやり取りがあったのでしょうか。

最初の出会いは、ユナイテッドの投資先が集まるイベントでしたね。

―― ATTEND bizを運営する株式会社Lboseは、ユナイテッドから出資を受けていますからね。

はい。そのときのコミュニケーションから「スムーズに対話できそうな方々だな」という印象はありました。その後正式にKasookuの譲渡が決まり、複数の開発会社とお話しする中で、技術面とコミュニケーション面で信頼がおけると判断したLboseにお願いしました。

柔軟に寄り添ってくれるLboseの存在が心強かった

―― うれしいお言葉、ありがとうございます！では、実際の開発はどのように進めていったのですか。

カソークもLboseも、事業譲渡されたサービスの開発を経験したことのある人は誰もいないため、日々手探りで進めていきました。綿密に計画しても、思いも寄らないところでバグが発生することは日常茶飯事。

でも、多くの方が利用中のサービスなので、移管中だからといってサービスを止めるわけにはいかない。とにかく「大変だった」の一言ですね。

―― なぜ、事前に計画しているのに思い通りに開発が進まなかったのでしょうか。

他社から譲渡されているから――つまり、カソーク社内には、事業責任者の私も含めてKasookuの全体像を把握している人がいないんです。

そのため、Lboseから「このデータどこにありますか？」「ここの技術はどうなっていますか」と質問をされても、「私も知らない、でも誰に聞けばいいかも分からない」と思う場面が日々発生していました。

また、サービスモデルの変更に伴う改修だけでなく、いわゆる「技術負債」を削ぎ落として、シンプルでわかりやすいシステムにしていきたかった。ただ先ほどお話したように、そもそも裏側全体を把握している人が社内にいません。

「不要だと思ったコードを削ぎ落としたら、システムにログインできなくなった」など、予想外の影響が出て開発がストップすることは日常茶飯事でしたね。

―― 想像するだけでもとても大変そうです……。

同時並行で、サービスの運営は続けないといけないし、登録者との面談も進めないといけないし、競合調査もしなきゃいけない。システムだけに限らず、何から手を付けたらいいのか分からない状態でした。

―― そのようなカオスな状況の中、「Lboseがパートナーでよかった」と思ったポイントはありますか。

柔軟に対応していただいたのは、本当にありがたかったですね。一般的な開発は、最初に要件定義をがっつり固めて進めていきますよね。

でも、Kasookuは事業譲渡されたシステムという特殊な状況下にあったから、実際に触ってみないと分からないことが多くて。毎日のように想定外の課題が出てくる中で、Lboseは「要件定義外なので」と言わずに一緒に悩んでくれる。それがすごく心強かったです。

―― Lboseに所属しているのは、副業やフリーランスの方がほとんどです。「本業じゃないと、しっかりコミットしてくれないのでは」と不安な方もいると思いますが、その点はいかがでしたか。

むしろ副業やフリーランスの方たちだからこそ、柔軟に対応していただけるんだろうな、と思っていましたね。

システムのトラブルは、曜日や時間帯を問わず発生します。ユーザーに影響の少ないものなら稼働日まで様子見できますが、「アカウントにログインできない」などの大きなトラブルは、休日だろうが深夜だろうがすぐに対応しないと、ユーザーの今後のキャリアを左右する可能性もあります。

Lboseのメンバーは、副業やフリーランスだから働く曜日も時間もバラバラです。そのためか、どんなタイミングで連絡をしても、10分以内には一次返信をいただける。その安心感は大きかったですね。

Kasookuで社会構造を変え、社会を“善進”させていきたい

――  いろんな困難を乗り越えながら、Kasookuはリニューアルしたのですね。

はい。Kasookuと​​Salesforceを連携するため、引き続きLboseにはお世話になっています。新しいチャレンジをするたびに、大きな壁にぶつかる。でも、あのカオスな状況を一緒に乗り越えてくれたLboseとなら、なんとなかると思えるんですよね。

―― ありがとうございます。最後に、Kasookuの今後の展望を聞かせてください。

大きく2つあります。1つは、副業人材を増やすこと。副業に興味のある方は年々増えてきている一方で、副業やフリーランス採用を躊躇する企業はまだまだ多く、需給のバランスが取れていない状況です。

でも、Lboseのように副業人材の多さが強みになっている企業もあります。Kasookuを通じて、副業・フリーランス人材のイメージアップを図っていきたいですね。

もう1つは、ユナイテッドのパーパス「意志の力を最大化し、社会の善進を加速する」に則った副業・フリーランス人材を増やしていくこと。副業に興味がある方は増えてきているとお話しましたが、その理由はさまざまです。お小遣い稼ぎをしたい方もいれば、成長のためにしたい方もいます。パーパスに基づくと、後者の方を増やしていきたいですね。

―― 中川さん、本日はありがとうございました！

カソークとは違う側面ですが、Lboseも副業・フリーランス人材のチームで成果をあげ、これまで一般的だった「週5、8時間勤務」の社会構造を変えていきたいと思っています。

ただ、長年積み重ねてきた“当たり前”を変えるのは簡単ではありません。少しずつでも変化を起こすため、カソークとLboseは今後も協力していこうとお話しました。一緒に高い壁を乗り越えた私たちなら、いつかきっと実現できるはず。中川さん、改めてありがとうございました！

パラレルキャリアを実現するための複業募集や複業探しを実現するプラットフォーム「Kasooku（カソーク）」

サービスサイト：https://kasooku.jp/

＜執筆＝仲奈々 ／ 編集＝園田遼弥 ／ 撮影＝三浦えり＞